Vol.11 Nutrition
Guide「アミノ酸の働き」
|
||
スポーツとアミノ酸サプリメント 体内では常に、アミノ酸がたんぱく質を合成して、筋肉や心臓、腎臓など体内組織をつくるなど重要なはたらきをしています。近年アミノ酸がスポーツサプリメントとして注目されるようになったのは、筋力の向上・持久力の向上・集中力の維持などアスリートがもっとも期待する局面で、アミノ酸の生理機能のはたらきが解明されてきたからです。では、スポーツサプリメントの主役と考えられるアミノ酸について、それぞれの特徴をみてみましょう。 グルタミン グルタミンは筋肉中のアミノ酸の約60%を占めている大切なアミノ酸です。筋肉のたんぱく質合成の促進、胃や小腸などの消化器の機能維持や構造を保つための主要なエネルギー源になることなど、生体で合成されるグルタミンは大切な役割を果たしています。しかし、非必須アミノ酸で、生体で必要量を合成出来るため、最近まで余り重要視されていませんでした。ところが、1980年代になり、グルタミンは“ある条件下では、必要なアミノ酸”と呼ばれるようになりました。ある条件とは何なのでしょうか? ストレス・病気・運動 病気やケガなどで身体にストレスがかかると、筋肉で合成されたグルタミンが修復や治療のために血液中や損傷部へ送り込まれます。このようなストレス状態になると、体内でのグルタミンの合成が必要量に追いつかず、結果として筋肉から喪失することがあります。(入院中に筋肉が痩せ細ってくることをイメージするとわかり易いでしょう。)「病気やケガもなくトレーニングも順調、ストレスもかからない。」多くの人はそう思うでしょう。しかし、ウエイトトレーニングなどで筋肉を使うことも大きなストレスとなります。このように身体に大きなストレスがかかる場合、グルタミンをサプリメントで補う必要があります。 食事とグルタミン グルタミンは肉(牛・豚・鶏など)や、魚、卵などに豊富に含まれていますが、調理などで熱を加えたり、酢など酸の強いものを加えると変成してしまいます。市販の栄養補助食品も、製造過程で熱を加えるため、グルタミンはほとんど含まれていません。食事でグルタミンを摂ろうとすれば、刺し身のように生のまま摂るしかありません。
BCAA 9種類のアミノ酸のうち、バリン・ロイシン・イソロイシンは、その分子構造の特性から「分岐鎖アミノ酸」(Branched Chain Amino Acids)と総称され、その頭文字をとって「BCAA」と呼んでいます。BCAAは食物たんぱくに含まれる必須アミノ酸の約35%を占め、筋肉を構成している筋細組織の主成分です。
BCAAを補給すると、筋細組織の素材となって筋肉づくりに役立ちます。BCAAのひとつであるロイシンは、筋たんぱくの分解抑制と合成促進の両面の働きがあるので、筋力アップには特に大切です。ほとんどのアミノ酸が主に肝臓で代謝されるのに対し、BCAAはその大半が筋肉に運ばれ代謝されます。これはBCAAが筋肉のエネルギー代謝に深く関わっているからです。激しい運動やウエイトトレーニングを行なうと、筋肉中のたんぱく質が分解されBCAAがエネルギー源として利用されます。そこでBCAAを補給すれば、筋肉の損傷をすばやく回復し、筋肉痛や筋肉疲労の防止に役立ちます。さらにBCAAには、血中乳酸値を抑える機能があり、筋肉疲労を防ぐ効果があるといわれていますが、同時に主観的疲労感、つまり気力や集中力の低下も防止すると考えられています。
アルギニン 筋肉を増強するためにも、損傷した筋肉を修復するためにも成長ホルモンは不可欠です。アルギニンはこの成長ホルモンの分泌を促す大切なアミノ酸です。アルギニンを摂ることによって、筋たんぱくの合成が促進されます。またアルギニンには、血管拡張効果や免疫増強作用もあり、BCAA、グルタミンとともに、アミノ酸サプリメントの主役と考えれています。
たんぱく(プロテイン)は、アミノ酸で構成されています。それなら「プロテインを摂っていればアミノ酸は十分足りている…」と考える方も多いのではないでしょうか。それぞれのサプリメントの特徴を見てみましょう。プロテインパウダーは、筋肉づくりからダイエットまで、からだづくりに必要な良質のたんぱく質を手軽に補給することができます。ペプチドタイプのサプリメントは、プロテインの消化吸収を一段と高めたものですから、胃腸の弱い方がプロテインパウダーの代わりに摂るとか、胃腸に負担をかけたくないとき、例えば間食時や寝る前などに摂るといいでしょう。これに対し、BCAAやグルタミンなどのアミノ酸サプリメントは、筋肉の合成促進、分解抑制、免疫力増強などの役割分担(生理活性機能)がはっきりとしているので、アスリートの競技力向上に効果的です。 |
< BACK | TOP | NEXT > |